大動脈が破れ血管外に出血すると、心タンポナーデ(心臓を包んでいる膜の中に出血したために、心臓が動けなくなる状態)が起こったり、血胸(胸腔内に血が溜まった状態)が起こったりします。大動脈が破裂すると、出血性のショックで急死する可能性が高まります。, 【偽腔による圧迫で血が流れなくなる(血流障害)】 その理由は、術後の筋力低下や後述する「せん妄」を予防するためであり、特に高齢患者さんでは重要です。 急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。 血管へのストレスを減らすためにも、寒暖の差が小さくなるように気をつけるとよいでしょう。, 大動脈解離の治療は前述した分類によって大きく2パターンに分かれます。 ニュースなどでたびたび耳にすることがありますが、「いまいちよくわからない」と思う方もいるでしょう。 Copyright © NewHeart Watanabe Institute All rights reserved. 2013;128[suppl 1]:S175-S179)。脳卒中を合併した大動脈解離と非合併の大動脈解離では脳卒中合併の方が胸痛が少ない(69.7% vs 82.3% P<0.001)、失神が多い(43.5% vs 15.3%)、脈拍欠損が多い(50.5% vs 28.5%)結果でした。, また国内の23例大動脈解離StanfordA型に脳梗塞を合併した報告まとめでは(大動脈解離StanfordA型226例中23例 10%)、rt-PAの投与に該当する症例が57%(13例)、発症から受診までの時間2時間(中央値)、症状は意識障害78%(18例)、胸痛48%(11例)、片麻痺91%(21例 右4例、左17例)、解離が波及した血管は腕頭動脈100%、右総頚動脈83%、左総頚動脈52%、左鎖骨下動脈23%でした(JSCVD 2016;25:1901 下に23例をまとめた表を掲載します)。, 大動脈解離のentry部位として上行大動脈基部からの順行性解離が多いため、腕頭動脈~右総頸動脈をかむことが多く(左麻痺が多いため特に注意)、rt-PAの投与基準を満たす症例が多いという点が特に重要かと思います。, 全例胸部造影CT検査を行う訳ではないので、病院によってプロトコルは様々と思います。個人的にはrt-PAもしくは血栓回収の適応となる症例は頸動脈エコーと心エコーを救急の現場でぱぱっと当てるようにしています。心エコーでは大動脈基部の拡張、AR、心嚢液貯留といった大動脈解離にともなう合併症がないかどうかを調べ、頸動脈エコーは流速が測定できなくても、フラップの確認だけでも診断には十分です(下図は”J Neuroimaging 2015;25:671″より引用)。, このほか頸動脈MRAを撮影することで、頸動脈のmottled high signal “snowstorm sign”が大動脈解離に特異的な所見であるとしています(下図引用:Magnetic Resonance Imaging 2016;34:902–907)。私が前勤めていた施設はこの頸部MRI撮影による大動脈解離見逃し防止の方法を採用していましたが、時間がかかりすぎてしまう点が難点もあると個人的には思います。, 大動脈解離の除外は急性期脳梗塞で最も重要な項目です。以下の様な注意点も挙げられています(General Thoracic and Cardiovascular Surgery (2018) 66:439–445)。, 非常に臨床的に重要なテーマですよね、分かりやすくまとめて頂きありがとうございます。私は研修医に大動脈解離の神経合併症を特に重点的に教えるようにしていますが、今後は先生の記事を必ず見るように指導させて頂きますm(_ _)m。たまたまかもしれませんが、無痛性大動脈解離の神経救急は市中病院で本当に多いように感じています。, 初期対応時は血圧、D-dimer、エコー所見が特に重要でしょうね。私の勤めている病院では頭部CTに加え、単純胸腹部CTをルーチンで撮影しています。大動脈解離とCOVIDの同時スクリーニングができることを考えると、現在の感染流行状況からstrokeに対してMRI 1stでなく、CT 1stの病院が増えてくるのではないかと思います。, コメントいただき大変ありがとうございます。

大動脈解離とは、大動脈の血管壁が裂け、血液の通り道が、本来のものとは別にもうひとつできた状態です。, その結果、胸や背中に激痛が走り、大動脈が破裂したり、多くの臓器に障害をもたらしたりする重大な合併症を引き起こします。放置すると命にかかわります。, ここでは、大動脈解離はどういう原因で起こり、どんな症状が現われ、どう治療するのかなどについて説明します。, 大動脈解離とは、大動脈の血管壁になんらかの理由で亀裂が入り、そこから血管壁の中に血液が流れ込んで、本来の血液の流れ道とは別の、もうひとつの流れ道ができた状態です。この血管壁の裂けた状態を「解離」と呼びます。, 大動脈の血管壁は、内膜・中膜・外膜の三層構造になっています。血液の流れる側が内膜、外側が外膜、内膜と外膜の間にあるのが中膜です。, 内膜が裂けると、その裂け目から血液が中膜に流れ込み、中膜が膨らみます。この膨らみを「偽腔[ぎくう]」(解離腔)と言い、本来の血液の通り道を「真腔」と言います(図1)。, 偽腔の外側には外膜しかないので、血圧に負けて外膜が破れ、血管の外に出血したら、致命的な事態を招くことになります。, 偽腔は、血流の強い圧力に押され、血液の流れる方向に沿って、ある一定の長さに伸びてゆきます(つまり、解離が広がってゆきます)。偽腔を流れる血液は、流入した裂け目とは別の内膜の裂け目から、再び真腔に戻ります。真腔から偽腔への血液の入り口を「エントリー(流入口)」、偽腔から真腔への血液の戻り口を「リエントリー(流出口)」と呼びます。真腔と偽腔を隔てる血管壁(内膜・中膜)を「フラップ」と呼びます。, 【偽腔開存型】 特に高齢患者さんの場合、せん妄の出現によってリハビリが進まなくなるため、ADLの低下につながるリスクが高いです。, せん妄を予防するためには、現在の日時や場所などを思い出してもらったり、入院している理由などを理解してもらうことが大切です。

「手術で命は助かったけど歩けなくなった」という結果にならないよう、できるかぎり早くリハビリを進めていきます。, 保存療法の場合、入院後は血圧を下げる薬(点滴)が開始となり、そのままベッド上安静が続きます。 ニューハート・ワタナベ国際病院 大動脈は、内膜・中膜・外膜と3層構造をしていますが、このなかでも一番内側にある内膜に亀裂が入ることが大動脈解離の原因です。 入院や手術などの出来事をきっかけに、一時的な認知機能低下を生じる状態を「せん妄」とよびます。 朝起きた直後は体のエンジンをかけるために血圧が高くなるので、洗面所や屋外などの寒い環境に体をさらすことは危険です。 偽腔による圧迫で枝分かれした血管が塞がれ、各臓器に血液が届きにくくなると、狭心症、心筋梗塞、脳の虚血(虚血とは血が足らなくなること)、脳梗塞、腸管の虚血、腎不全、上肢の虚血、下肢の虚血、脊髄の虚血(症状としては対麻痺[ついまひ]=両側の下肢の運動麻痺)などが起こります。, 大動脈解離が起こってすぐの時期は、強い血流を偽腔の薄い外膜のみで支えているために、きわめて破裂しやすい状態にあります。上行[じょうこう]大動脈(心臓を出てすぐの、心臓に近い大動脈)で解離が起こった場合、無治療で放置すると、1時間に1%ずつ死亡率が上がり、発症して48時間(2日間)以内に約半数の人が亡くなる、と言われています。男女ともに70代に最も多く発症すると言われていますが、40代や50代での発症も稀ではありません。, 大動脈解離と解離性大動脈瘤(大動脈瘤解離とも言います)は、言い方が違うだけで、基本的に同じものです。, 大動脈瘤というのは、動脈硬化などによって大動脈壁の弱くなっているところがコブ状に膨らんだものですが、この大動脈瘤の中の解離性のもの(血管壁がはがれるもの)を解離性大動脈瘤(大動脈解離)と呼んで、解離のない大動脈瘤と区別しています。治療方法などに多少の違いがあるからです。, 大動脈解離の多くはコブ状の膨らみを形成しますが、それほど血管が拡張していないもの(コブの形成が顕著でないもの)でも、治療上は解離性大動脈瘤として扱います。, 大動脈解離の分類は、解離が起こった場所、あるいは発生してからの時間経過(病期)によってなされます。, 大動脈は、心臓を出てすぐは上方に向かいます。この上に向かう大動脈を「上行大動脈」と言います。直径3センチくらいの太さがあります。ここからは、心筋(心臓の筋肉)に血液を送る冠動脈[かんどうみゃく]が分岐しています。, 上行大動脈は、やがて弓状に弧を描いてUターンし、下行[かこう]します。この弓状の部分を「弓部[きゅうぶ]大動脈」と言います(「大動脈弓」とも言います)。ここには上方に3本の大きな分岐(腕頭[わんとう]動脈、左総頸[ひだりそうけい]動脈、左鎖骨下[ひだりさこつか]動脈)があり、それらを通して脳や左右の腕に血液が送られています。, 弓部大動脈は、下行しながら心臓の後ろ側(背中側)に回り、下半身へと向かいます。この下行する大動脈のうち、横隔膜から上を「下行大動脈」、横隔膜から下を「腹部大動脈」と言います。また、上行大動脈、弓部大動脈、下行大動脈を総称して「胸部大動脈」と言います。, 腹部大動脈からは、肝臓や胃腸、腎臓などの腹部臓器に向かう血管が枝分かれしています。大動脈は下行するにつれ少しずつ径を狭め、腹部大動脈では直径2センチほどの太さになっています。, 腹部大動脈は、臍の高さで左右の総腸骨[そうちょうこつ]動脈に分かれます。これらは、骨盤内の臓器や両足に血液を運ぶ役割を担っています。, 解離が起こった場所による分類には、スタンフォード(Stanford)分類とドベーキ(DeBakey)分類があります(図5)。, スタンフォード分類は、予後や治療方針の決定に役立つ分類で、大動脈解離をA型とB型に分けます。A型は上行大動脈に解離があるもの、B型は上行大動脈に解離がないものです。A型のほとんどが緊急手術を要し、一般的に予後も不良です。, ドベーキ分類は、解離の進展範囲とエントリー(血液の偽腔への流入口となる内膜の亀裂)の位置によるもので、Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲa型、Ⅲb型の4つに分かれます。, Ⅰ型は、エントリーが上行大動脈にあり、解離が下行大動脈や腹部大動脈にまで及ぶもの、Ⅱ型は、エントリーやリエントリー(再流入口)が、上行大動脈や弓部大動脈に納まるもの、Ⅲa型は、エントリーが下行大動脈にあり、解離が横隔膜内に及ぶもの、Ⅲb型は、エントリーが下行大動脈にあり、解離が横隔膜より下にまで及ぶものです。, 大動脈解離の原因としては、動脈硬化、高血圧、高脂血症、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、喫煙、ストレス、マルファン(Marfan)症候群などの先天的な(生まれつきの)遺伝性疾患、などが考えられます。特に高血圧は重要な危険因子です。, マルファン症候群というのは、遺伝子の異常により組織と組織を繋ぐ結合組織が弱くなって、全身で細胞の弾力性がなくなる病気です。血管壁を弱体化させて解離などを引き起こすだけでなく、心臓の弁を壊したりもします。このほか、遺伝性の危険因子に嚢胞性中膜壊死[のうほうせいちゅうまくえし]などがあります。, 大動脈解離には前兆といえるものがなく、発症の予測はきわめて困難です。